三角の彼方へ(2022)

percussion and electronics

16'

 


 

三角形の牢獄は、罪を赦してくれないのか。

進もうとする時間もとらわれて

帰ってこない。

 

 

おそらく能を代表する作品であろう《道成寺》では、作品中のあちこちに鱗形(三角形)が散りばめられている。鱗形は古来より蛇の鱗に由来する執着のメタファーとしての文様であった。この能でも、後場に蛇体となって登場するシテが、鱗形を作品のあちこちに提示する。

 

特に、吊り下げられた鐘の下で鱗形を描きながらゆっくりと舞う乱拍子はあまりにも有名である が、その独特な時間感覚は多くの人々を魅了してきた。歌舞伎や文楽など、後の時代の二次創作も数多い。

 

あの緊迫した空気を作曲家として模倣するのは至難の業だが(600 年以上かけて培われてきた芸 術に挑もうとするのが無謀である)、鱗形というモチーフを借用し、それを空間化することに挑戦 した。

打楽器奏者が電子パッドを用いることによって、演奏家が直接空間に音を投射できる編成になっ ている。ミクスト作品では生演奏とそれに付随する音響といった図式となるが、本作品ではリアルタイムの音響処理よりもむしろ、空間化された独奏といった性格が強い。

 

Tri  三角形 - トライアングル

BP  BopPad - ボーレン=ピアース

Scale  音階 - 鱗

 

上の 3 つを組み合わせ、作品のキーワードとしている。

 

 

初演:

2022.11.3 @東京藝術大学第2ホール

沓名 大地(perc)藤川 大晃(elec)

 

視聴する(配信アーカイブのためノイズ多少あり。ヘッドホン推奨)